2013年5月13日月曜日

確かに


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「確かにこれは貫通している」
そう言って感心して見せたのは穴あけパンチで穴を開け始めて早や十六年のパンチ加藤だった。
彼は毎日毎日自分で作ったパンチで穴を開け続けているのだ。
「一体どんな穴開けパンチを使えばこんなに見事に穴が開けられるのか‥」
と言って彼は指を入れて確認した。
穴を開けられたものは全て、穴あけパンチで開けたものだと思い込んでいるのだ。


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「いる、いないで言ったら、いるの方がいいような気がする」
「私はいる、いないで言ったら、いないの方がいい気がします」
「どうしてそう思うんだい?」
「だって、いない方がせいせいするじゃないですか」
「なるほど、つまり君はせいせいしたいということだね」
「そうでもないわ。ただ、いるよりいない方がせいせいしやすいんじゃないかしら」
「なるほど。確かに『ホント、いるとせいせいするわ~』とは誰も言わないね」
「ええ。いてせいせいすることはできないけど、いなくてせいせいすることはできる。人間って不思議ね」
「まったくだ。それは『いてもいなくても一緒』という論理にとっての例外は常にありえる、ということでもあるね」
「そうね。ちなみに私は『いてもいなくても一緒』という論理がいなくなったらせいせいするわ」
「それは僕もせいせいするかもしれないな」
「それで、あなたは何でいる方がいいと思うんですか?」
「それはやっぱり、いる方がはかどるからだよ」
「確かにいないよりはいた方がはかどるかもしれない。だけど、いない方がはかどる場合もあるんじゃないかしら」
「いる時のはかどりといない時のはかどりはどう違うのか‥それが問題だ」
「少なくとも、いてはかどったとしても、いてせいせいすることはできないでしょう」
「なるほど、それはそうかもしれない。そこが君と違うところだね」


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「本当だって!本当に嗅いだんだって!あいつは見たっていってるけどそれは絶対に嘘で、俺はたしかに嗅いだんだ!」




2013年5月8日水曜日